年別アーカイブ: 2019

TJASSST 2019にモロッコSATREPSから19名の研究者が参加しました。

2019年11月29日から12月2日まで、チュニジアのスース市で行われたSATREPSプロジェクト第4回合同調整委員会に合わせ開催されたTJASSST2019に、モロッコから19名のプロジェクト・メンバー及び元メンバーが参加、機能解析5名、製品化技術開発7名、生態系解析2名、バリューチェーン分析2名、合計16名が日頃の研究成果を発表しました。

開会式典では、カディ・アヤド大学(UCA)のAbdellatif HAFIDI教授がモロッコでも第1号となる産学連携協定の締結を報告、ポスター発表部門では同大学機能解析チームの博士課程学生1名、そしてハッサンII世農獣医大学(IAV)生態系機能解析チームの修士課程学生1名と元メンバー1名が優秀賞に輝くなど、モロッコにおけるSATREPSプロジェクトの前進を印象付けました。

TJASSST終了後には日本とチュニジアの高等教育分野の協力の象徴であるボルジュ・セドリア・テクノパークを訪問、チュニジア側研究者との意見交換や施設見学を通じ、本案件が目指す目標への道筋について考察する機会に恵まれました。 大人数のミッションで、予期せぬハプニングもあった約6日間でしたが、チュニジア-日本間の長年培われた知見と努力の成果が、ついに開花時期を迎えたチュニジア。そのチュニジアを間近に見ることで、SATREPS第1フェーズのモロッコ・チームの現在位置を把握し、残り実質1年のプロジェクト期間中に優先して実施すべきことを、UCA・IAV両機関の研究者間、モロッコ側とチュニジア側研究者間、モロッコ側と日本側の研究者間のコミュニケーションを通じて考えた、実り多いミッションとなりました。

産学連携協定締結を発表するHafidi教授
食品・農業部門のセッションで議事進行役を行うZahar教授
ポスター・セッションで表彰されたIAV修士
課程学生と元メンバーと指導したYessef教授
(左端)と川田助教(右端)
ポスター・セッションで表彰されたUCA博士
課程学生と指導したGadhi教授(右端)と
表彰を行った中嶋教授(左端)

『チュニジア-日本 シンポジウム:持続的社会開発のための産学連携』(TJASSST 2019)『エビデンスに基づく乾燥地生物資源シーズ開発による新産業育成研究』 第4回合同調整委員会(JCC) チュニジア共和国国立スース大学筑波大学礒田教授に表彰

第15回目の開催となるチュニジア-日本 文化・科学・技術学術会議(TJASSST)は、本年、「持続的社会開発のための産学連携」をテーマとして、「食・農・健康」、「水・環境・社会」、「材料・エネルギー」の幅広い領域の研究者、専門家、政策立案者のための研究領域を超えた学術交流の場として、日本から約50名、モロッコから約20名、チュニジアから約150名、総計200名を超える参加者がスースに集いました。

 TJASSST 2019の開会では、北アフリカにおける筑波大学の長年にわたる学術交流・国際共同研究の促進、チュニジア人研究者の人材育成、研究環境の整備、産学連携促進への貢献を称えて、チュニジア共和国国立スース大学アリ・ムティラウイ学長より筑波大学礒田教授に『チュニジアにおける科学技術向上と国際共同研究への貢献』に対する表彰が行われました。   

本シンポジウムおよびSATREPS合同調整員会(JCC)は多領域にわたる国際共同研究の促進と強化、北アフリカ・地中海沿岸諸国・日本の研究者間の研究成果およびノウハウの共有、国連の持続可能な開発(SDGs)目標の実践的・革新的解決策の提案、アカデミア・産業界との産学連携の促進を目指すものです。TJASSST 2019の開会では、上記SATREPS事業の枠組みにおけるチュニジアおよび本邦企業・研究機関との産学共同研究覚書及び契約の署名を行いました。

現地メディアでの報道(一部、仏文):          https://www.entreprises-magazine.com/satreps-signature-des-protocoles-daccord-et-conventions-du-projet-de-valorisation-scientifique-des-bio-ressources-en-zones-arides-et-semi-arides-pour-la-creation-dune-nouvel/ https://www.leconomistemaghrebin.com/2019/12/02/quatre-protocoles-daccord-signes-cadre-projet-satreps/        

https://www.espacemanager.com/tjassst-2019-rapprocher-la-recherche-universitaire-de-lindustrie-pour-un-developpement-social.html

https://www.espacemanager.com/tjassst-2019-un-symposium-scientifique-au-coeur-des-priorites-nationales-et-de-la-cooperation-tuniso

参加企業一覧:                           (株)ニュートリションアクト・日本ゼオン株式会社・Saraya Beauté et Santé Co., Ltd.・株式会社ADEKA・Plant Natura・SADIRA社・BOUDJEBEL SA VACPA社・Herbes de Tunisie (Ayachi-Safir) 参加大学・機関一覧: 筑波大学・京都大学・宮崎大学・九州大学・上智大学・東京農工大学・釧路公立大学・富山高等専門学校・東京工科大学・JSPSカイロ事務所・JICA スース大学、スース大学医学部、ボルジュセドリア・バイオテクノロジー・センター、スファックス・バイオテクノロジー・センター、国立乾燥地研究所、スファックス国立エンジニアリングスクール、国立農業学院、ボルジュセドリア・水工学研究所他。

モロッコSATREPS:機能性解析グループ(G1)が国際会議に参加しました。

2019年10月17日、モロッコ東部アトラス山脈越えの要衝、オアシスの街エラシディアで実施された国際学会「1st International Congres of Human Health and Oasis Natural Ressources」(10月16日~18日)に、SATREPSプロジェクト機能性解析グループ(カディ・アヤド大学)が参加しました。同学会はムライ・イスマイル大学科学技術学部(本校はメクネス市)が初めて主催する学会で、ベルギーやフランス、隣国アルジェリアなど、国内外から多数の研究者、民間セクター関係者が参加しました。砂漠のオアシスや高地乾燥地帯の食薬資源の研究・開発、民間セクターでの製品化状況・課題について発表しました。同グループからはリーダーのChemseddoha GADHI教授、Hafida Bouamama教授、そして博士課程学生2名が参加、ポスター発表を中心にプロジェクト成果を発表、出席者から高い関心が寄せられました。 また、同学会に先立ち、10月15日には、農業省農産物付加価値化ワルザザート地域事務所(Regional Office of Valorisation of Agricultural Products in Ouarzazate :ORMVAO)を訪問、同市出身の博士課程学生が研究するサフラン付加価値化について情報収集を行いました。料理などで利用される高価なサフランは一つの小さな花からめしべ僅か3本程度を採取した後、現在、他の部分は廃棄されています。この廃棄される部分にも様々な機能性が認められることから、同グループでは付加価値化を目指した研究を進めています。同事務所が管轄するサフランの里タリウィン市からも若手研究者2名が出席、サフランの生産・加工・規格検査方法・付加価値化研究・関係する民間セクターの現状について意見交換を行いました。今後は収集した情報を元に、タリウィン市の民間企業を訪問、将来的な産学連携研究の立ち上げを目標に関係づくりを進めていく予定です。

モロッコSATREPS:初の産学連携協定が締結されました。

2019102日、モロッコSATREPSプロジェクトの産学連携協定第1号が、筑波大学、カディ・アヤド大学、アトラス・オリーブ・オイル社(AOO)間で締結されました。チュニジアと比較すると、産学連携による共同研究開発の理解促進・具体化が遅れていたモロッコですが、20165月の案件開始から約2年半、礒田博子研究代表を中心に、地道で粘り強い説明を継続、ついに共同研究の基礎的な枠組みとなるGeneral Agreementの締結に至りました。今後は同枠組みを基盤に、具体的な共同研究課題を決め、筑波大学からの支援を得ながら、3者で共同研究を一歩一歩進めていくことになります。 

本協定締結に際し、AOO社のOthmane AQALLAL社長、Omar AQALLAL会長が来日、筑波大学産学連携本部も訪問し、共同研究の具体的な進め方、関係機関の負担事項等につき説明を受けました。また、滞在中は礒田研究代表、製品化技術開発グループの中嶋光敏教授の案内で、日本企業数社との意見交換も実施されました。今後は日本企業も巻き込んだモロッコでの産学連携促進が期待されています。

アルガンの文化的背景に関する調査実施(モロッコSATREPS・グループ4)

2019年8月末、SATREPSグループ4ではモロッコ南部のアガディール、エッサウィラにおいて、アルガン、オリーブ、その他食用・薬用植物を伴うモロッコの固有文化、習俗の実態を把握するために調査を実施しました。

アルガンはモロッコ南部でしか生育ができず、またその機能性により国際的市場価値の非常に高い生物資源です。その保全と有効利用のために、モロッコではアグダルという伝統的な土地制度を用いて主なアルガン林を国が保有し、その立ち入りと使用を定めています。アグダルの規制は行政区によって多少異なりますが、概ね4月から7月にかけてはアルガン林での収穫や剪定、家畜の放牧が禁止されています。今回訪れた8月は、ちょうど収穫の時期でした。

調査はIAV第4グループのNoureddine Ibnezzyn、Hajar Salamat両氏の協力のもと行われ、アルガンオイル生産を行う7か所の女性協同組合をまわり、アマジグの女性生産者を対象にアルガンやオリーブなどの伝統的使用法や、習俗、習慣などについて聞き取りを行いました。また本調査により、乳児の体を丈夫にするとされるアルガンを用いた民間療法や、様々な祭事食、アルガン樹木への参詣などの伝統習俗について情報を得ることができました。アラブの春以降、原理主義的立場からの批判が強くなり、こうした伝統習俗は急速に失われているといわれており、無形文化を記述、保存することがより一層重要になってきています。そしてまたアルガン生産の文化伝統的背景を調べることで、現地の食薬資源の高付加価値ブランド戦略のシーズとなることが期待されます。今回の協同組合での調査結果をもとに、各村落での詳細な調査を引き続き行う予定です。

また今回訪問した女性協同組合では、アルガンオイル精製の様子も視察しました。アルガンオイル生産はモロッコ南部の農村で働く女性たちの生活向上のための貴重な収入源となっています。国際的にもアルガンオイルの需要が高まっている一方で、各協同組合からは販路確保の困難さについてしばしば言及がありました。インターネットでの海外郵送を行っている組合もありましたが、多くの女性協同組合は需要の大きい市場への販路開拓に課題があるようです。国際見本市参加や直販店舗の設置、ITの活用など、販路拡大についての生産者のマーケティング技術向上の必要性を感じました。今後調査を続ける中で、こうした情報を現地生産者にもたらす事が出来ればと願っております。

1-1

アルガンナッツからアルガンアーモンドを取り出す作業

1-2

アルガンアーモンドを石臼で挽いている様子

1-3

アル・バラカ協同組合の化粧用アルガンオイル

チュニジアで現地企業と覚書(MOU)を締結(SATREPS)

今月、筑波大学は、SATREPS研究成果の社会実装に向けて、チュニジア国ボルジュセドリアバイオテクノロジーセンター(CBBC)、チュニジア企業Herbes de Tunisie Company、そして日本企業の株式会社ニュートリション・アクトと四者共同研究覚書(MOU)を締結しました。これによりチュニジアの生物資源シーズの有効利用に向けた研究が、企業との連携の下に、より一層活発になることが期待されます。

本覚書締結に関しては、SATREPS(JST)のSNSに紹介されたほか、現地JICA事務所でもプレスリリースが行われ、現地メディアが英語、仏語、アラビア語で紹介しました。

SATREPS(JST) SNS

https://www.facebook.com/Friends.of.SATREPS/?__tn__=%2Cd%2CP-R&eid=ARCUXs1b9TvnH3lySLGCLpx1vuf1iNKO9tLBVcdCE6pZl7uWrboq0OVf9ZnOPjvYzTXlEzlNDwhJwhGn

(英文)

https://www.tap.info.tn/en/Portal-Economy/11561427-tunisia-and-japan

(仏文)

https://www.realites.com.tn/2019/06/cooperation-tuniso-japonaise-signature-dun-protocole-daccord-dans-le-cadre-du-projet-satreps/

https://www.tap.info.tn/fr/Portail-Economie/11561281-signature-d-un

https://africanmanager.com/un-partenariat-tuniso-japonais-aux-multiples-debouches/

https://www.webmanagercenter.com/2019/06/19/436175/signature-dun-protocole-daccord-tuniso-japonais-pour-la-valorisation-des-bio-ressources-dans-les-zones-arides/

https://www.leconomistemaghrebin.com/2019/06/20/bio-ressources-accord-tuniso-japonais-valorisation-scientifique/

https://tn24.ween.tn/fr/article/signature-d-un-protocole-d-accord-tuniso-japonais-pour-la-valorisation-des-bio-ressources-dans-les-zones-arides-150583

https://theworldnews.net/tn-news/cooperation-japonaise-signature-d-un-protocole-d-accord-dans-le-cadre-du-projet-satreps

(アラビア語)

https://www.tap.info.tn/ar/%D9%88%D9%8A%D8%A8-%D8%B3%D9%8A%D8%AA-%D8%A5%D9%82%D8%AA%D8%B5%D8%A7%D8%AF-Portal-Economy/11561832-%D8%AA%D9%88%D9%82%D9%8A%D8%B9-%D8%A8%D8%B1%D9%88%D8%AA%D9%88%D9%83%D9%84-%D8%A7%D8%AA%D9%81%D8%A7%D9%82

モロッコSATREPSプロジェクト~モロッコ農村の今とアルガン活用術~

本センターが実施しているSATREPS事業の一環として、ハッサンII世農獣医大学(IAV)製品加工技術開発グループでは、現在、生育環境の相異がアルガン成分へ与える影響について分析するため各地域の農家からサンプルとなるアルガンの調達を進めています。近年の健康志向の向上に伴い、モロッコ原産のアルガンが注目され、そのオイルを活用した化粧品等も日本で人気が急上昇中です。しかし、オイルを絞るためのアルガン・アーモンド(仁核)20Kgを取得するために、300Kgのアルガンの実(乾燥したもの)が必要なことをご存知ですか?

Tiznit郊外、峠の上に位置する集落で、伝統的な土壁で作られたアルガン倉庫

集落からの景色

熟して収穫、乾燥させたアルガンの実。白い粒がアルガン・アーモンド

 

 

 

 

アルガンの生息地帯はモロッコ南西部に限定され、実の収穫は点在する小規模農家が中心となります。アトラス山脈の南西地域に位置するため、海岸線ギリギリまで峠や山々が連なり、まだまだ電気・水道の整備がやっとという地域が多く残ります。

アルガンの地元では、収穫した実を乾燥させ、女性たちが手作業で実を剥ぎ、石で殻を割り、残ったアルガン・アーモンドを都市部にあるオイル加工業者へ販売しますが、残った殻は、伝統的に建設資材や家庭用燃料として利用しています。例えば、日本では寺社や旧家の入り口等のたたきに利用される砂利舗装を見かけますが、アルガン生息地の農家は入り口や中庭のたたきに、補強目的でアルガンの殻を敷き詰めコンクリートで固めます。

日本の砂利舗装

モロッコのアルガン殻を利用した農家入り口のたたき

またこれら農家では、料理用ガス台のある家でも庭先に伝統的なかまどが設置され、料理に活用されますが、その燃料として木炭と共に火力が強く、燃焼時間も長いアルガンの殻が利用されています。

現在プロジェクトでは、日本企業とも連携し、搾油するアルガン・アーモンドのみならず、アーモンドを包む強固な殻など、副産物の付加価値化にも着目し、その成分分析や、現段階では主に化粧品等への活用方法を研究しています。しかし、本プロジェクト実施を契機として副産物の伝統的活用法にヒントを得た研究が進めば、現在、殆ど廃棄されるアルガン副産物も、将来的には意外な有効活用法が生まれるかもしれません。農村開発の起爆剤としての役割が期待されます。

SATREPS 産学連携共同研究:本邦企業日本ゼオン株式会社がチュニジアの圃場を視察しました

JICA-JST地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)

『エビデンスに基づく乾燥地生物資源シーズ開発による新産業育成研究』

研究代表者:礒田博子 筑波大学地中海・北アフリカ研究センター長 /生命環境系教授

相手国代表:

チュニジア共和国高等教育省(ボルジュセドリアバイオテクノロジーセンター、スファックスバイオテクノロジーセンター、スファックス大学国立技術学院、スース大学医学部、国立農業学院、乾燥地研究所)

本プロジェクトでは、チュニジアやモロッコのような乾燥地に多く植生している食薬資源(オリーブ、ローズマリー等の伝承薬効を有する食文化に取り込まれた食資源)が持つ成分や機能の科学的根拠に基づく生物資源開発研究を推進し、機能性食品・化粧品素材をはじめ、高付加価値製品を生み出せるような加工技術、生産力の改善、大学や研究機関と民間企業との産学連携による北アフリカにおける新産業の育成を目指しています。

チュニジアはEUに次ぐ世界的なオリーブオイルの生産地として知られています。本プロジェクトでは、チュニジア産オリーブが含むポリフェノール成分のがん・アレルギー・生活習慣病予防効果等の健康機能について研究してきました。

しかし、チュニジアにおけるオリーブの栽培面積は世界のオリーブ栽培面積の20%に及びますが、 単位面積当たりの収量がスペインなどに比べて非常に低いこと、さらに年ごとの収量が大幅に変動し安定しないことが課題となっています(International Olive Council (COI), Politique Tunisie, 2012, p.1)

2019年4月、チュニジアを訪問した本邦企業日本ゼオン株式会社と筑波大学、チュニジア国立農業学院、民間企業Sadira Agromillora社は、日本ゼオン株式会社のプロヒドロジャスモンがオリーブの収量やポリフェノール値を増やす効果などに関する共同研究を実施しています。本邦企業との産学連携により、チュニジアのオリーブオイル産業が抱える単位面積当たりの収量増加と安定という課題解決に寄与することが期待されています。

モロッコSATREPSプロジェクト、礒田研究代表、中嶋教授による実施促進ミッションが実施されました。

2019年4月30日から5月4日まで、製品化技術開発グループの中嶋光敏教授、及び研究代表の礒田博子教授による現地実施促進ミッションが実施されました。

2019年3月にモロッコ側研究機関であるカディ・アヤド大学(UCA)、ハッサンII世農獣医大学(IAV)へそれぞれ追加機材が導入されたことを踏まえ、製品化技術開発グループの中嶋教授が両機関における機材稼働状況、研究の進捗状況を確認、同時にこれら機材を活用した研究活動の方向性につき、両機関の若手研究員に対し、助言、技術指導が行われました。

一方、モロッコではあまり理解が進んでいない産学連携の促進に関し、連携先候補企業のアトラス・オリーブ・オイル社(AOO)会長宅でのワーキング・ランチを実施、礒田研究代表、中嶋教授、UCAのAbdellatif HAFIDI教授が参加しました。同社の新製品サンプルの機能性解析結果の共有や今後の具体的な共同研究の内容につき活発な協議が行われ、産学連携協定の枠組みを規定する協定が大枠で合意されました。今後は協定の署名手続き、そして具体的な共同計画案の作成が進められる予定です。

SATREPSプロジェクトの実施が初めてとなるモロッコ、開始当初からの日本側研究機関による粘り強い理解促進と働きかけがようやく実を結ぼうとしています。

UCAのSATREPSラボで超臨界液体抽出装置を使った実験へ助言を行う中嶋先生

IAVのSATREPSラボで搾油機を使った実験の意義、方向性について説明する中嶋先生

AOO会長宅で。右から中嶋先生、AOO社長、礒田研究代表、Hafidi教授、AOO会長

モロッコSATREPS若手研究員が活躍中

20165月から開始されたモロッコ初めてのSATREPSプロジェクト、様々な紆余曲折を経て、若手研究員の活動が活発化しています。

2019418日、メクネスで開催されたモロッコ農業国際展(Salon International de l’Agriculture au Maroc : SIAM)では、SATREPS研究機関であるハッサンII世農獣医大学(IAV)の博士課程学生約20名の研究成果を競うコンクールが行われ、製品化技術開発グループのCHAFAI Youssefさんが、直近の本邦研修で得たサボテン・オイル乳化技術にかかる成果を発表、見事2位に輝きました。

同年423日からは製品化技術開発グループSATREPSラボ主任のTarik OUCHBANIさんをリーダーに、同グループと生態系解析グループ、バリューチェーン分析グループの学生による合同フィールド調査を実施、アガディール地方を中心に、アルガンやサボテンの生育環境や現地の農家・組合が直面する課題をヒアリングし、サンプル収集を行いました。また、JICASDGsビジネス支援事業「女性の雇用創出のための アルガンオイル生産・販売ビジネス調査」の現地協力業者サハラ・カクタス社とも意見交換を行いました。アルガンオイルの品質担保に配慮した搾油方法と、搾油量確保と作業効率化を主眼とした現行搾油方法の間で葛藤する現場の生の声に耳を傾け、製品分析・搾油技術開発等においてIAVが担うべき役割について考察しました。

日本は若葉が芽吹く季節ですが、モロッコでもIAVを中心に、SATREPSプロジェクトの実施を通じた若い研究者達の躍動を感じる季節を迎えています。近い将来、モロッコ農業セクターにおいて、農産品の研究・開発を担う人材として活躍することが期待されています。

IAV学長より表彰されるChafaiさん

SIAMで農産品輸出促進を担当する機関の代表と意見交換するOuchbaniさん(左端)とZahar主任教授(左から2番目)

合同フィールド調査でTiznitの農家からヒアリング

サハラ・カクタス社代表との意見交換

JST-JICA SATREPS平成30年度活動報告会の実施

3月27日(水)、筑波大学地中海・北アフリカ研究センター会議室にて「JST-JICA SATREPSエビデンスに基づく乾燥地生物資源シーズ開発による新産業育成研究 平成30年度活動報告会」を行いました。報告会では礒田研究代表から、今年度実施されたSATREPS中間評価とそこで提示された課題への対応について報告があり、続いて筑波大学、京都大学、九州大学の各研究グループからの進捗状況の報告がありました。報告会にはJSTの長峰研究主幹、大川主任調査員、JICAの渋谷調査役も参加され、産学連携への取り組みを含めた今年度の各グループの活発な活動および成果を評価され、今後二年間のプロジェクトの方向性に対して前向きなコメントをいただきました。

第一グループからの報告


礒田研究代表による総括

チュニジアSATREPS: 礒田センター長、中嶋教授がチュニジアを訪問しました。

2019年3月19日(火)~23日(土)まで礒田センター長、中嶋教授がチュニジアを訪問しました。
今回の訪問では2019年11月29日~12月1日に開催が決定したチュニジア・日本文化・科学・技術学術会議(TJASSST2019)および2019年度SATREPS合同調整会議について、ホスト研究機関であるスース大学を訪問したほか、スファックス国立エンジニアリングスクール(ENIS)、スファックス・バイオテクノロジーセンター(CBS)、ボルジュセドリア・バイオテクノロジーセンター(CBBC)のメンバーとの研究進捗協議、カルタゴ大学、高等教育省、チュニジア農業漁業連盟(UTAP)の表敬、民間企業Boudjebel VAC PA社との研究進捗協議を行いました。

左から中嶋教授、スース大学Moez KHENISSI副学長、ハラビ教授、Dr. Kefi (CERTE)

スファックス国立エンジニアリングスクール(ENIS)、スファックス・バイオテクノロジーセンター(CBS)との協議。筑波大学博士課程留学生を中心としたチュニジア産オリーブオイルのブランディングのための産地判別技術(地縁技術)開発の進捗を確認。

ENISの研究室を視察

カルタゴ大学を訪問。左から礒田教授、Riadh ABDELTATTAH副学長、Nadia MZOUGHUI AGUIR 副学長、中嶋教授、ハラビ教授

チュニジア高等教育省訪問。左から中嶋教授、礒田教授、Rym SAIED高等教育省研究活用新総局長、ハラビ教授、Samia CHARFI-KADDOUR科学研究総局長(前研究活用総局長)

カスリ元駐日チュニジア大使、農村女性の生活向上を支援しているUTAPおよびアフリカ女性農業者連盟と協議・意見交換を行なった。

デーツ輸出大手BOUJEBEL VACPA社を視察。デーツ製品のバイプロダクトであるデーツシートの有効利⽤に関する共同研究の進捗について協議を行なった。

エジプト国Kafrelsheikh大学 Maged El-Kemary学長がARENAを訪問

2019年3月5日(火)、エジプト国Kafrelsheikh(カフルエルシェイク)大学のProf. Maged El-Kemary学長と在京エジプト大使館のHany A. El-Shemy参事官がARENAを訪問し、礒田センター長、中嶋副センター長、イスラム助教が対応しました。学長は、Kafrelsheikh大学が2006年に新設された大学があるが、科学技術分野で同国トップの大学とのこと、また、新たに創薬センターを設立しており、本学ARENAとの連携に強い意欲を示された。ARENAとしても今後の同大学への訪問など交流を進めていきたい旨、回答した。

H30年度ARENA特別セミナーUtilization of Water and Natural Resources for Sustainable Developmentの開催

2019年3月12日(火)、バングラデシュとチュニジアから電気工学と水管理に関する2名の研究者を招聘し、平成30年度のARENA特別セミナーUtilization of Water and Natural Resources for Sustainable Developmentを筑波大学にて開催いたしました。中嶋光敏教授による開会のあいさつに続き、まずはラジシャヒ大学(バングラデシュ)電気工学研究科のAbu Bakar Md. Ismaili教授により、“Possibility of Solar Energy Harvesting With Silicon Extracted from the Padma River Sand of Bangladesh”と題された講演が行われました。イスマイリ教授は佐賀大学で学位を取得され、日本の研究機関との共同研究を長年行ってこられました。このたびの講演は、本センターのIslam M. Monirul助教との共同研究にも関わるもので、バングラデシュ、パドマ川の砂から高純度のシリカを抽出し、太陽光電池を生成するなど、持続的開発に向けたバングラデシュ独自の資源の有効利用について詳細な説明が行われました。続いてボルジュセドリア・エコパーク、水資源研究技術センター(チュニジア)のMohamed Kefi博士より、“Adoption of Environmental Strategies towards Sustainability in Tunisia”と題した講演が行われました。Kefi博士は筑波大学で学位を取得され、SATREPSなどの本センターのプロジェクトに共同研究者として深く関わられてこられました。また、毎年チュニジアで開催しているTJASSSTにも参加いただいております。講演は世界規模での気候変動や人口増加などによる環境変化のなか、水資源を確保し、また安定的に供給するための国際的な指標、国連のMDGsやそれに続くSDGsの政策について行われました。またチュニジアを事例としてそうした国際的なポリシーがどのように適応されているのかを検討し、最後に国家間の協力や産学連携などこれからの課題を提案されました。本セミナーには本学教員や留学生など28名が参加し、講演の後には参加者から次々と質疑が行われ、講演者との議論が活発に行われました。

講演を行うIsmaili教授

講演を行うKefi博士

質疑応答の様子

講演者及び参加者

 

モロッコSATREPSハッサンII世農獣医大学で搾油機材の試験運転を実施しました。

2019年3月7日(木)、モロッコSATREPSプロジェクトの研究機関であるハッサンII世農獣医大学に、2016年のプロジェクト開始当初から慎重に検討を重ねてきたアルガン、オリーブ、サボテン等の搾油機と関連機材が導入されました。同11日(月)には、これら機材を製造したLes Atelier Afyach社のエンジニアがIAVを訪問、試験運転を実施しました。

試験運転では、製品化技術開発グループのMohamed ZAHAR主任教授、Tari OUCHBANI准教授、そして先生方が担当する修士課程の学生2名の他、バリューチェーン分析グループのOuiam LAHLOU教授と修士課程の学生も参加し、エンジニアの説明を聞きつつ、特に搾油段階における温度コントロールについて、熱心なディスカッションが行われました。

通常、これら機材はアルガンやサボテン等のオイルや関連製品を生産する女性組合や企業向けに、高温で、短時間に大量の搾油を行うことを目的として製造されています。 しかし、本プロジェクトでは、筑波大学の中嶋光敏教授と搾油機の仕組みを確認の上、OUCHBANI准教授が何度も業者へ説明・議論し、モロッコのアルガン、サボテン・オイル製造現場で実際に利用されている機材の搾油ヘッド部分に温度測定機能を追加するなど、研究目的を踏まえた独自のアレンジを追加しています。今後は、学生達を指導しながら、搾油時の機材各所の温度、そして搾油速度が成果品となるオイルや残渣に与える影響を調査し、ベストな状態となる組み合わせを追及します。4月には生態系分析グループと連携した産地別アルガンの品質の特徴解明に向けたフィールド調査も予定されており、モロッコにおける食品工学の拠点を目指してIAVでの研究活動が本格的に始動します。

2019年1月、中嶋教授(右)の助言を受けるウチバニ准教授(中央)と業者エンジニア(左)

3月11日、試験運転で学生へ課題提起を行うウチバニ准教授(右から二人目)とザハール教授(右)

搾油の入り口と出口、出てくる油の温度を測定中

研究開始です。

 

モロッコSATREPS:生態系解析グループの合同フィールド調査開始。

2月24日からモロッコSATREPSプロジェクト第3グループ生態系解析チームの合同調査が始まりました。同グループは機能性植物の生態環境調査、産地判別技術の開発を目的に、筑波大学生命環境系の川田清和助教と、長年モロッコ国中の野山を歩き回り、植物生態系に精通するハッサンII世農獣医大学(IAV)のMohamed YESSEF教授が中心となりサンプルを収集、様々な食薬植物の生態環境にかかる共同研究を進めています。

今回の合同調査から、東京農工大学大学院で国際環境農学を指導されている藤井義晴教授と、IAVのYasmina IMANI教授と連携し、収集された膨大な植物のアレロパシー(Allelopathy:他感作用)作用を研究し、テータベースに纏めていく予定です。アレロパシー効果のある植物は、抗酸化作用など食薬機能を持つ場合が多く、プロジェクトへの付加価値の高い貢献が期待されています。

合同調査には、YESSEF教授が新たに受け入れた修士課程の学生も同行し、日本・モロッコ双方の研究者からフィールドで細かい指導を直接受けました。先生方の培ってきた知見が若い次世代へ引き継がれていきます。

サンプル収集の様子 (アガディール海岸線)

  アルガンの葉のポリフェノール測定 (山の斜面)

 

 

サンプル収集場所の土も採取します。

今後の研究方針を説明する藤井先生

 

松原康介編著『地中海を旅する62章 歴史と文化の都市探訪』(明石書店)が出版 されました

地中海・北アフリカ研究センターの松原康介准教授が編著者である『地中海を旅する62章 歴史と文化の都市探訪』が明石書店より出版されました。本センターからは他に、柏木健一准教授、川田清和助教、喜田川たまき研究員、深見奈緒子客員共同研究員、渡邊祥子客員共同研究員が寄稿しています。センターで実施しているSATREPSのシンボルであるアルガンの木がカラー写真で掲載されています。詳しい情報はこちらの出版社のページをご参照ください。
http://www.akashi.co.jp/book/b436910.html

2018年度筑波大学の教員BEST25(FY2018 BEST FACULTY MEMBER)に 地中海・北アフリカ研究センター長 礒田博子教授(生命環境系)が選ばれ表彰されました。

モロッコSATREPS:SDGsビジネス支援事業調査団がIAVを訪問

2019年2月11日、JICAが支援するSDGsビジネス支援事業「女性の雇用創出のための アルガンオイル生産・販売ビジネス調査」で、プロジェクトを総括するジェイ・シー・ビー・ジャポン社の板橋マサ江代表取締役を団長とする調査団が、現在本センターが実施中のSATREPSプロジェクトのカウンターパートであるハッサンII世農獣医大学(IAV)を訪問しました。

日本でも一躍注目を集めるアルガンやサボテン関連製品ですが、アルガン原産国であるモロッコでは、生産の主力は農村女性達が構成する小規模組合が担っています。本プロジェクトでは、ジェイ・シー・ビー・ジャポン社とモロッコのサハラ・カクタス社が連携し、日本から独自に開発した機材を導入、伝統的手法による女性達のケガのリスクを低減し、且つ、アルガンの品質確保に配慮した作業環境を整備・定着させることで、持続的な所得機会の向上を目指します。

今回の訪問では、SATREPSプロジェクトでIAVが中心に実施している品質分析や加工技術の開発、アルガン等の生態系解析と産地別特性の判明へ向けた研究、バリュー・チェーン分析につき、活発な意見交換が行われました。今後も、こうした情報交換を継続し、両案件の相乗効果の発現を目指します。近い将来、IAVで認証された高品質なアルガン等関連製品が、日本の消費者へ届くことが期待されます。

モロッコSATREPSに(株)ADEKA斎藤主任研究員が来訪しました。

2019年1月9日~15日まで、礒田博子研究代表、中嶋光敏教授と共に、(株)ADEKA研究開発本部斎藤雅子主任研究員がモロッコを訪問、SATREPSプロジェクト・サイトの視察、アルガンやオリーブ残渣の付加価値化へ向けた第一回現地調査を実施しました。

調査では、共同研究機関であるハッサンII 世農獣医大学(IAV)やカディ・アヤド大学(UCA)の研究室を視察、モロッコ側研究者との意見交換を行いました。また、生態系解析グループのユッセフIAV教授、製品化技術グループでSATREPSラボ主任のウチバニ博士と共に、モロッコ有数のオリーブ関連製品企業であるアトラス・オリーブ・オイル社の農場視察をはじめ、アルガンの産地であるエッサウィラやアガディール地方を訪問、関連製品を生産・販売する女性組合や農協で、セクター全般の現状や残渣の活用状況にかかる情報収集とサンプルの回収を実施しました。

筑波大学と(株)ADEKAは共同研究協定を締結。今後は、日本・モロッコ両国の企業の参画による産学連携研究開発の促進が期待されています。

アトラス・オリーブ・オイル社会長,社長 と共に

アルガン・オイル生産現場の視察

アルガン生息状況の視察

カディ・アヤド大学での協議