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モロッコSATREPS:初の産学連携協定が締結されました。

2019102日、モロッコSATREPSプロジェクトの産学連携協定第1号が、筑波大学、カディ・アヤド大学、アトラス・オリーブ・オイル社(AOO)間で締結されました。チュニジアと比較すると、産学連携による共同研究開発の理解促進・具体化が遅れていたモロッコですが、20165月の案件開始から約2年半、礒田博子研究代表を中心に、地道で粘り強い説明を継続、ついに共同研究の基礎的な枠組みとなるGeneral Agreementの締結に至りました。今後は同枠組みを基盤に、具体的な共同研究課題を決め、筑波大学からの支援を得ながら、3者で共同研究を一歩一歩進めていくことになります。 

本協定締結に際し、AOO社のOthmane AQALLAL社長、Omar AQALLAL会長が来日、筑波大学産学連携本部も訪問し、共同研究の具体的な進め方、関係機関の負担事項等につき説明を受けました。また、滞在中は礒田研究代表、製品化技術開発グループの中嶋光敏教授の案内で、日本企業数社との意見交換も実施されました。今後は日本企業も巻き込んだモロッコでの産学連携促進が期待されています。

アルガンの文化的背景に関する調査実施(モロッコSATREPS・グループ4)

2019年8月末、SATREPSグループ4ではモロッコ南部のアガディール、エッサウィラにおいて、アルガン、オリーブ、その他食用・薬用植物を伴うモロッコの固有文化、習俗の実態を把握するために調査を実施しました。

アルガンはモロッコ南部でしか生育ができず、またその機能性により国際的市場価値の非常に高い生物資源です。その保全と有効利用のために、モロッコではアグダルという伝統的な土地制度を用いて主なアルガン林を国が保有し、その立ち入りと使用を定めています。アグダルの規制は行政区によって多少異なりますが、概ね4月から7月にかけてはアルガン林での収穫や剪定、家畜の放牧が禁止されています。今回訪れた8月は、ちょうど収穫の時期でした。

調査はIAV第4グループのNoureddine Ibnezzyn、Hajar Salamat両氏の協力のもと行われ、アルガンオイル生産を行う7か所の女性協同組合をまわり、アマジグの女性生産者を対象にアルガンやオリーブなどの伝統的使用法や、習俗、習慣などについて聞き取りを行いました。また本調査により、乳児の体を丈夫にするとされるアルガンを用いた民間療法や、様々な祭事食、アルガン樹木への参詣などの伝統習俗について情報を得ることができました。アラブの春以降、原理主義的立場からの批判が強くなり、こうした伝統習俗は急速に失われているといわれており、無形文化を記述、保存することがより一層重要になってきています。そしてまたアルガン生産の文化伝統的背景を調べることで、現地の食薬資源の高付加価値ブランド戦略のシーズとなることが期待されます。今回の協同組合での調査結果をもとに、各村落での詳細な調査を引き続き行う予定です。

また今回訪問した女性協同組合では、アルガンオイル精製の様子も視察しました。アルガンオイル生産はモロッコ南部の農村で働く女性たちの生活向上のための貴重な収入源となっています。国際的にもアルガンオイルの需要が高まっている一方で、各協同組合からは販路確保の困難さについてしばしば言及がありました。インターネットでの海外郵送を行っている組合もありましたが、多くの女性協同組合は需要の大きい市場への販路開拓に課題があるようです。国際見本市参加や直販店舗の設置、ITの活用など、販路拡大についての生産者のマーケティング技術向上の必要性を感じました。今後調査を続ける中で、こうした情報を現地生産者にもたらす事が出来ればと願っております。

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アルガンナッツからアルガンアーモンドを取り出す作業

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アルガンアーモンドを石臼で挽いている様子

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アル・バラカ協同組合の化粧用アルガンオイル

チュニジアで現地企業と覚書(MOU)を締結(SATREPS)

今月、筑波大学は、SATREPS研究成果の社会実装に向けて、チュニジア国ボルジュセドリアバイオテクノロジーセンター(CBBC)、チュニジア企業Herbes de Tunisie Company、そして日本企業の株式会社ニュートリション・アクトと四者共同研究覚書(MOU)を締結しました。これによりチュニジアの生物資源シーズの有効利用に向けた研究が、企業との連携の下に、より一層活発になることが期待されます。

本覚書締結に関しては、SATREPS(JST)のSNSに紹介されたほか、現地JICA事務所でもプレスリリースが行われ、現地メディアが英語、仏語、アラビア語で紹介しました。

SATREPS(JST) SNS

https://www.facebook.com/Friends.of.SATREPS/?__tn__=%2Cd%2CP-R&eid=ARCUXs1b9TvnH3lySLGCLpx1vuf1iNKO9tLBVcdCE6pZl7uWrboq0OVf9ZnOPjvYzTXlEzlNDwhJwhGn

(英文)

https://www.tap.info.tn/en/Portal-Economy/11561427-tunisia-and-japan

(仏文)

https://www.realites.com.tn/2019/06/cooperation-tuniso-japonaise-signature-dun-protocole-daccord-dans-le-cadre-du-projet-satreps/

https://www.tap.info.tn/fr/Portail-Economie/11561281-signature-d-un

https://africanmanager.com/un-partenariat-tuniso-japonais-aux-multiples-debouches/

https://www.webmanagercenter.com/2019/06/19/436175/signature-dun-protocole-daccord-tuniso-japonais-pour-la-valorisation-des-bio-ressources-dans-les-zones-arides/

https://www.leconomistemaghrebin.com/2019/06/20/bio-ressources-accord-tuniso-japonais-valorisation-scientifique/

https://tn24.ween.tn/fr/article/signature-d-un-protocole-d-accord-tuniso-japonais-pour-la-valorisation-des-bio-ressources-dans-les-zones-arides-150583

https://theworldnews.net/tn-news/cooperation-japonaise-signature-d-un-protocole-d-accord-dans-le-cadre-du-projet-satreps

(アラビア語)

https://www.tap.info.tn/ar/%D9%88%D9%8A%D8%A8-%D8%B3%D9%8A%D8%AA-%D8%A5%D9%82%D8%AA%D8%B5%D8%A7%D8%AF-Portal-Economy/11561832-%D8%AA%D9%88%D9%82%D9%8A%D8%B9-%D8%A8%D8%B1%D9%88%D8%AA%D9%88%D9%83%D9%84-%D8%A7%D8%AA%D9%81%D8%A7%D9%82

モロッコSATREPSプロジェクト~モロッコ農村の今とアルガン活用術~

本センターが実施しているSATREPS事業の一環として、ハッサンII世農獣医大学(IAV)製品加工技術開発グループでは、現在、生育環境の相異がアルガン成分へ与える影響について分析するため各地域の農家からサンプルとなるアルガンの調達を進めています。近年の健康志向の向上に伴い、モロッコ原産のアルガンが注目され、そのオイルを活用した化粧品等も日本で人気が急上昇中です。しかし、オイルを絞るためのアルガン・アーモンド(仁核)20Kgを取得するために、300Kgのアルガンの実(乾燥したもの)が必要なことをご存知ですか?

Tiznit郊外、峠の上に位置する集落で、伝統的な土壁で作られたアルガン倉庫

集落からの景色

熟して収穫、乾燥させたアルガンの実。白い粒がアルガン・アーモンド

 

 

 

 

アルガンの生息地帯はモロッコ南西部に限定され、実の収穫は点在する小規模農家が中心となります。アトラス山脈の南西地域に位置するため、海岸線ギリギリまで峠や山々が連なり、まだまだ電気・水道の整備がやっとという地域が多く残ります。

アルガンの地元では、収穫した実を乾燥させ、女性たちが手作業で実を剥ぎ、石で殻を割り、残ったアルガン・アーモンドを都市部にあるオイル加工業者へ販売しますが、残った殻は、伝統的に建設資材や家庭用燃料として利用しています。例えば、日本では寺社や旧家の入り口等のたたきに利用される砂利舗装を見かけますが、アルガン生息地の農家は入り口や中庭のたたきに、補強目的でアルガンの殻を敷き詰めコンクリートで固めます。

日本の砂利舗装

モロッコのアルガン殻を利用した農家入り口のたたき

またこれら農家では、料理用ガス台のある家でも庭先に伝統的なかまどが設置され、料理に活用されますが、その燃料として木炭と共に火力が強く、燃焼時間も長いアルガンの殻が利用されています。

現在プロジェクトでは、日本企業とも連携し、搾油するアルガン・アーモンドのみならず、アーモンドを包む強固な殻など、副産物の付加価値化にも着目し、その成分分析や、現段階では主に化粧品等への活用方法を研究しています。しかし、本プロジェクト実施を契機として副産物の伝統的活用法にヒントを得た研究が進めば、現在、殆ど廃棄されるアルガン副産物も、将来的には意外な有効活用法が生まれるかもしれません。農村開発の起爆剤としての役割が期待されます。

SATREPS 産学連携共同研究:本邦企業日本ゼオン株式会社がチュニジアの圃場を視察しました

JICA-JST地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)

『エビデンスに基づく乾燥地生物資源シーズ開発による新産業育成研究』

研究代表者:礒田博子 筑波大学地中海・北アフリカ研究センター長 /生命環境系教授

相手国代表:

チュニジア共和国高等教育省(ボルジュセドリアバイオテクノロジーセンター、スファックスバイオテクノロジーセンター、スファックス大学国立技術学院、スース大学医学部、国立農業学院、乾燥地研究所)

本プロジェクトでは、チュニジアやモロッコのような乾燥地に多く植生している食薬資源(オリーブ、ローズマリー等の伝承薬効を有する食文化に取り込まれた食資源)が持つ成分や機能の科学的根拠に基づく生物資源開発研究を推進し、機能性食品・化粧品素材をはじめ、高付加価値製品を生み出せるような加工技術、生産力の改善、大学や研究機関と民間企業との産学連携による北アフリカにおける新産業の育成を目指しています。

チュニジアはEUに次ぐ世界的なオリーブオイルの生産地として知られています。本プロジェクトでは、チュニジア産オリーブが含むポリフェノール成分のがん・アレルギー・生活習慣病予防効果等の健康機能について研究してきました。

しかし、チュニジアにおけるオリーブの栽培面積は世界のオリーブ栽培面積の20%に及びますが、 単位面積当たりの収量がスペインなどに比べて非常に低いこと、さらに年ごとの収量が大幅に変動し安定しないことが課題となっています(International Olive Council (COI), Politique Tunisie, 2012, p.1)

2019年4月、チュニジアを訪問した本邦企業日本ゼオン株式会社と筑波大学、チュニジア国立農業学院、民間企業Sadira Agromillora社は、日本ゼオン株式会社のプロヒドロジャスモンがオリーブの収量やポリフェノール値を増やす効果などに関する共同研究を実施しています。本邦企業との産学連携により、チュニジアのオリーブオイル産業が抱える単位面積当たりの収量増加と安定という課題解決に寄与することが期待されています。

モロッコSATREPSプロジェクト、礒田研究代表、中嶋教授による実施促進ミッションが実施されました。

2019年4月30日から5月4日まで、製品化技術開発グループの中嶋光敏教授、及び研究代表の礒田博子教授による現地実施促進ミッションが実施されました。

2019年3月にモロッコ側研究機関であるカディ・アヤド大学(UCA)、ハッサンII世農獣医大学(IAV)へそれぞれ追加機材が導入されたことを踏まえ、製品化技術開発グループの中嶋教授が両機関における機材稼働状況、研究の進捗状況を確認、同時にこれら機材を活用した研究活動の方向性につき、両機関の若手研究員に対し、助言、技術指導が行われました。

一方、モロッコではあまり理解が進んでいない産学連携の促進に関し、連携先候補企業のアトラス・オリーブ・オイル社(AOO)会長宅でのワーキング・ランチを実施、礒田研究代表、中嶋教授、UCAのAbdellatif HAFIDI教授が参加しました。同社の新製品サンプルの機能性解析結果の共有や今後の具体的な共同研究の内容につき活発な協議が行われ、産学連携協定の枠組みを規定する協定が大枠で合意されました。今後は協定の署名手続き、そして具体的な共同計画案の作成が進められる予定です。

SATREPSプロジェクトの実施が初めてとなるモロッコ、開始当初からの日本側研究機関による粘り強い理解促進と働きかけがようやく実を結ぼうとしています。

UCAのSATREPSラボで超臨界液体抽出装置を使った実験へ助言を行う中嶋先生

IAVのSATREPSラボで搾油機を使った実験の意義、方向性について説明する中嶋先生

AOO会長宅で。右から中嶋先生、AOO社長、礒田研究代表、Hafidi教授、AOO会長

モロッコSATREPS若手研究員が活躍中

20165月から開始されたモロッコ初めてのSATREPSプロジェクト、様々な紆余曲折を経て、若手研究員の活動が活発化しています。

2019418日、メクネスで開催されたモロッコ農業国際展(Salon International de l’Agriculture au Maroc : SIAM)では、SATREPS研究機関であるハッサンII世農獣医大学(IAV)の博士課程学生約20名の研究成果を競うコンクールが行われ、製品化技術開発グループのCHAFAI Youssefさんが、直近の本邦研修で得たサボテン・オイル乳化技術にかかる成果を発表、見事2位に輝きました。

同年423日からは製品化技術開発グループSATREPSラボ主任のTarik OUCHBANIさんをリーダーに、同グループと生態系解析グループ、バリューチェーン分析グループの学生による合同フィールド調査を実施、アガディール地方を中心に、アルガンやサボテンの生育環境や現地の農家・組合が直面する課題をヒアリングし、サンプル収集を行いました。また、JICASDGsビジネス支援事業「女性の雇用創出のための アルガンオイル生産・販売ビジネス調査」の現地協力業者サハラ・カクタス社とも意見交換を行いました。アルガンオイルの品質担保に配慮した搾油方法と、搾油量確保と作業効率化を主眼とした現行搾油方法の間で葛藤する現場の生の声に耳を傾け、製品分析・搾油技術開発等においてIAVが担うべき役割について考察しました。

日本は若葉が芽吹く季節ですが、モロッコでもIAVを中心に、SATREPSプロジェクトの実施を通じた若い研究者達の躍動を感じる季節を迎えています。近い将来、モロッコ農業セクターにおいて、農産品の研究・開発を担う人材として活躍することが期待されています。

IAV学長より表彰されるChafaiさん

SIAMで農産品輸出促進を担当する機関の代表と意見交換するOuchbaniさん(左端)とZahar主任教授(左から2番目)

合同フィールド調査でTiznitの農家からヒアリング

サハラ・カクタス社代表との意見交換