【FSPチュニジアコース現地レポート】ラマダーン中の試食販売員

フルサ・サイーダプログラム(チュニジアコース)参加生の人文学類2年生小川湧司さんから、現地レポートが届きました。


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チュニジアに来てから僕はチュニス市街の中央市場(Marché Central)に足繁く通っている。中央市場はいつも8時ごろから15時ごろまで開かれており、野菜や果物、魚、乳製品、肉、パン、日用品などがスーパーマーケットよりも新鮮な状態で安く売られている。

中央市場に行くと僕がいつも寄る果物店がある。店主はもともと小学校の教諭として勤めていた経験を持ち、英語が話せるために彼とはよく会話をするようになった。彼との会話は半分英語、半分正則アラビア語(フスハー)で進む。できるだけアラビア語を使うように努力しているが、僕の語彙力では十分なコミュニケーションは難しい。

仕入のトラック(2014.07.22)

仕入のトラック(2014.07.22)

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 初めて彼の店に行ったのは7月中旬だった。その時は少し会話をして買い物をしただけだったが、後日店に再び行くと、店主と僕の間には面白い関係が出来上がった。その日、7月22日にはラマダーンも終盤に差し掛かっていた。ラマダーン中のムスリムは日没から日の出の期間以外に飲食ができない。この日におきた不思議な出来事について書いておこうと思う。

その日、彼の店に到着してから僕はブドウを一房購入した。彼はその際味見をするよう僕に指示した。”ladhidh jiddan (非常においしい)”と僕が返すと、彼はその「味見」をほかの客が通った際にも僕に何度かさせた。そして味の感想を客に宣伝させるのだ――むろんその言葉は”ladhidh jiddan”。

他の客が味見をして買うことができないところに、僕という外国人かつムスリムではない人間が入り込んだことにより、状況は変化した。店主の広告塔としてブドウを褒める自分は奇妙だったし、客の感覚器官としてブドウを食べている気分はなおさら不思議なものだった。この出来事で僕は自分の母国からの距離、そして「異国」をひどく強く印象付けられた。僕はここでは異人だ、けれど異人なりにラマダーンという状況下にうまく取り込まれたのだった。

中央市場に並ぶ果物たち(2014.07.22)

中央市場に並ぶ果物たち(2014.07.22)

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  ラマダーンが明けてからは市場の雰囲気も変わり、市場でしばしば起こっていた喧嘩も減った。「試食販売」事件はあの日限りのことだったし、今は客も味見して買い物ができる。店主との関係はいまも続いているが、僕も間もなくチュニジアを発つことになってしまった。残りの短い期間にも彼との何気ない会話を楽しむことにしたい。

2014.08.04
小川湧司

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