エジプト・レポート(3)

現在調査のためエジプトに滞在している北アフリカ研究センター(ARENA)所属の岩崎真紀先生から、レポートが届きました。前回に続きエジプトレポートをお送りします。

エジプト・レポート(3)2012年7月27日

今日は外出しようとしたところ、ホテルの従業員さんに「日本人が来ているよ」と呼びとめられ、行ってみると、大学生くらいのカジュアルな服装をしたアジア、ヨーロッパ、アフリカの人々の一団が。そのなかのアジア系の青年に「日本人の方ですか?」と聞いてみたのですが、どうも言葉が通じていない様子。英語に切り替えて話しかけてみると、中国から来た大学生とのこと。話しはじめるともう1人アジア系の女性がやってきて、自分も中国人で、仲間は世界のいろいろな国から来ていると言います。「どういうグループなんですか?」と聞くと「アイセック(AIESEC)っていう国際的な大学生のサークルです」という答え。そこでわたしは大変驚きました。なぜなら、わたしが学部生のころ入っていたサークルだったからです。「わたしも大学生のとき、アイセックに入っていたよ!!!」と言うと、彼らも非常に驚いて、「えー、すごい偶然ですね!!」ととても喜び、その後は、立ち話でしたが、話が弾みました。(写真1・2)

写真1.中国から来た大学生(2012.7.27)

アイセックというサークルには世界100カ国以上の大学がかかわっており、海外でのインターシップ支援や海外の大学のアイセックとの交流などを行なっています。わたしが入っていたときには、シンガポールとインドネシアに行ったり、海外からのインターン生たちのお世話をしたりしました。とくにインドネシアでは現地の大学生のお宅にホームステイさせていただいたり、大学で一緒にスポーツしたりと、得難い体験をしたことを覚えています。細々とではありますが、今でもそのときに友達になったインドネシアの人々とはつながっています。

今回、最初に話した中国人の学生さんに「ところで、今、僕は何という街にいるの??」と聞かれました。ちょっと笑ってしまいそうな質問ですが、それなりに決められたプログラムに沿って集団で行動するので、自分のいる街が分からないことがあっても不思議ではありません。わたしもアイセックの仲間たちとジャカルタのどの辺に滞在したのかいまだに知らないままです。それでも、どうにかなるのがグループでの旅ですし、分からなくてもともかく旅してみることを繰り返していくなかで、勇気や知恵を得て、自然に自立していくのだと思います。

ここミニヤで出会ったアイセックの一団は、中国、インド、ギリシア、英国、オランダ、ギリシア、スーダン、米国の大学生(男性5人、女性5人)で構成されていました。現地の学生たちとともにエジプト国内の観光地を回り、それをブログにアップして、観光活性化を図ることが今回の活動の目的だそうです。

写真2.中国から来た大学生(2012.7.27)

革命、選挙、新大統領誕生と政治社会状況がめまぐるしく変化するここ1年半のエジプトの産業のなかで、大変大きな痛手を負っているのが観光です。エジプト航空は観光客の激減によって革命後1年以上成田-カイロ直行便を休止していましたが、ようやくこの春運航を再開しました。しかし、かつて週7便だったのが、今は成田→カイロが週2便、カイロ→成田が週3便です。懇意にしているカイロの旅行代理店の方も観光客はまだまだ少ないままとおっしゃっていました。

そのようななかで、「I love Egypt」という文字と真赤なハートが書かれたTシャツを来たアイセックの学生さんたちは、観光業を営む人々だけでなく、以前の観光立国としての姿を取り戻してほしいすべてのエジプトの人々にとって、とても大きな励みになることでしょう。

1月25日革命の主体は若者でした。先日会ったコプト正教会の若者たちもカッシャーファ(スカウト運動)を通してエジプトを良くしようとしています。そして、今日、エジプトの観光産業振興のために遥々やってきた世界の若者たちと出会いました。ここでは、日本で見聞きしていたエジプトとは違う姿が見えてきます。革命後、なかなか始まらない議員選挙や大統領選挙に不信感を募らせていったエジプトの人々。時折放映されるカイロの暴動。そういったネガティブな側面は確かにあるし、こちらにいても耳にします。しかし、ここにあるのはそれだけではないことが分かりました。今もポジティブな方法で社会を変えようとしている若者たちがいます。そして、そういうエジプトの若者を支えようという世界の若者がいます。

* 写真はいずれも筆者撮影

岩崎 真紀(筑波大学北アフリカ研究センター・人文社会系 助教)

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